奥田小由女作品

漂う(ただよう)

この時期の特徴である、うねる板のようなフォルムの作品です。《或るページ》のシリーズと同じく女性の浮き彫りがほどこされつつも、より薄く多角的な造型となっているのが異なる部分です。上下左右のベクトルを意識したような板のゆらめきによって、大きな広がりと安定した軽やかさを演出している姿は《漂う》の題名を如実に表現したものといえるでしょう。

1970年頃の日本美術は、抽象芸術に湍を発した多種多様な表現が混在していた時代で、そんな背景もあってか、この作品は人形としてはかなり前衛的な表現となっています。しかし伝統技法に裏打ちされた技術によって丹念に塗り重ねられた胡粉のきめ細やかな質感は、従来の日本的な美意識を受け継いだものと言えるでしょう。この時期の小由女作品は、当代の鑑賞者に革新と伝統の粋を感じさせていたものと思われます。

作品情報

制作年:1973(昭和48)年 改組第5回日展
材質・形状:木・桐粉・胡粉
サイズ:57.0cm×70.0 cm×36.0 cm

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