奥田元宋作品

寂静(じゃくじょう)

描かれている桜は京都・仁和寺の御室桜がモデルとなっています。一部枯れかかった枝が満開の花を支えている桜の姿は様々な感慨を覚える構図であると感じ、また、雨後の水溜りに溜まっている花びらに、人が人として生きる喜びや悲しみを見たといいます。

画題の《寂静》は、悟りの境地を表す「涅槃」に付随する仏教用語で「静かな安らぎの境地」の意です。今を盛りと咲き誇る桜の花は「生」、細く枯れかけた枝は「死」を象徴しています。生と死を繋げて描くことで、生命の儚さと尊さを暗黙のうちに表しています。

元宋は風景の中に宗教的寓意を込めた作品を多く制作しています。風景を通して仏教の世界を覗き見る、作家独特の宗教画を象徴する一作です。

作品情報

制作年:1986(昭和61)年 改組第18回日展
材質・形状:紙本彩色・額装
サイズ:178.0cm×212.0cm

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