熊田千佳慕の世界展―愛するからこそ美しい
「日本のプチファーブル」と呼ばれ、自然の姿の観察を通して描く昆虫や植物のリアルな細密画で知られる熊田千佳慕(くまだ ちかぼ)。1911年に生まれ、戦前は商業デザイナーとして活躍しますが、戦後は児童向けの絵本を中心とした作画活動に転身しました。筆の穂先の数本の毛のみを使い昆虫の細かな毛を描き、植物の葉脈一本一本にいたるまで丁寧に表現する細密画は、対象を様々な角度から観察し「納得するまで描く」という信念のもと、一枚を描くのに何か月も費やしてきました。そうして生み出された膨大な作品群は、子どものみならず広い世代の人々を圧倒し、国内外で脚光を浴びています。
時に昆虫の捕食行動や枯れ果てる植物の姿をもリアルに描くことで食物連鎖の厳しさを表現するなど、自然界を徹底的に客観視しながら98歳で亡くなるまで絵筆を握って描き続けました。長年にわたって自然と向き合い続けた熊田は「自然は美しいから美しいのではなく、愛するから美しいのだ」という境地に達したといいます。
本展では、ライフワークとなった『ファーブル昆虫記』をはじめ、春夏秋冬の動植物の姿、ファンタジー作品、世界的な評価を受けている絵本の原画などの作品のほか、その創作の源とも言えるデッサンなどの資料を展示し,あらゆる命を愛した熊田千佳慕の世界を紹介します。
プロフィール
熊田千佳慕(くまだ ちかぼ)1911 ~ 2009
神奈川県横浜市生まれ。本名、熊田五郎。細密画家・童画家。
幼少時代は病弱で、庭先で虫や花と遊んで過ごしていた。この「小さな世界」との出会いと、父から聞いた「ファーブル」の存在が童画家の道を目指す原点となる。東京美術学校(現・東京藝術大学)鋳造科在籍のまま、山名文夫に師事し日本工房にデザイナーとして入社。同僚の土門拳とポスターなどを数多く手がけた。1945年、結婚から8日後、横浜大空襲で焼け出され、父も喪う。厳しい現実に直面するも、戦後に定職を棄て絵本の世界へ身を捧げる決意をする。驚異的な細密描写のため、ひとつの作品を仕上げるのに大変な時間を要し生活は困窮したが、70歳で「ファーブル昆虫記」の作品がボローニャ国際絵本原画展に入選し、一躍脚光を浴びる。その後、個展の開催やメディアへの出演などを通して世間の注目を集めながら、98歳で亡くなるまで制作を続けた。
※『熊田千佳慕のハイカラ人生記』(求龍堂)の紹介文を参照し構成
主な作品
会期
2024年10月31日(木) ~ 2025年1月13日(月祝)
※会期中の休館日 : 毎週水曜日(12月25日は開館)、12月27日(金)~2025年1月1日(水祝)
会場
奥田元宋・小由女美術館 企画展示室
開館時間
午前9時30分~午後5時
※11月16日(土),12月15日(日)は満月のため開館時間を午後9時まで延長
※入場は閉館時間の30分前まで
入場料金
- 一般 : 1,000(900)円
- 高校・大学生 : 500(400)円
- 中学生以下 : 無料
※常設展示「奥田元宋・奥田小由女の世界」もあわせて鑑賞できます
※( )内は20名以上の団体料金
※身体障害者手帳・療育手帳・精神障害者健康福祉手帳をお持ちの方は観覧料無料。入館の際に手帳等をご提示ください。
主催
奥田元宋・小由女美術館/中国放送/中国新聞社
後援
広島テレビ/広島ホームテレビ/テレビ新広島/広島エフエム放送/FMちゅーピー76.6MHz/エフエムふくやま/尾道エフエム放送/FM東広島89.7MHz/株式会社三次ケーブルビジョン/三次市/三次市教育委員会
協力
株式会社 求龍堂
企画協力
株式会社 ブレインズ・カンパニー
会期中のイベント
企画展関連イベントや満月関連イベントを行います。
詳細は後日掲載いたします。
令和6年度三次市支援事
この事業は、三次市の補助金等の支援により実施しています。